第5回 渡辺佑基「記録更新」

 めでたいのかめでたくないのか、とにかくすごい経験だった。

 南極へ向かう船旅の厳しさをあらわす言葉として「吠える40度、狂う50度、叫ぶ60度」というものがある。オーストラリアや南アフリカから南下し、南緯40度、50度、60度と通過するにつれ、海はどんどん荒く、凶暴になっていくという意味である。

 ところが今回の航海はまあ拍子抜けするくらい順調で、40度で吠えず、50度で狂わず、60度に到達してもちっとも叫ばない。60度を少し越えたあたりで南下をやめ、針路を西にとると多少は波にもまれるようになったが、それでも船内は平穏そのものである。

 と思っていたら突然きた。