第5回 いつも心にクマムシ愛

(写真クリックで拡大)

 クマムシ研究者、堀川大樹さんは、もともと動物生態学的な研究から出発して、NASAでの宇宙生物学を経、現在はパリ第5大学で分子生物学的なアプローチで自ら系統を確立したヨコヅナクマムシを研究している。2011年4月からの赴任のため、まだ論文という形では公になっていないものの、堀川さんはそれなりの手応えを感じているようだ。

 NASA時代の研究で、パリでの研究に直接つながるものを紹介しておこう。

「──紫外線によるDNAの損傷を調べたんです。乾眠していない活動中のヨコヅナクマムシに紫外線を当てるとDNAの中のチミンとチミンが隣り合っているところが、ぐちゃっとくっついてチミン2量体というのになるんです(注・チミンはDNAを構成する4種類の核酸塩基のうちの一つ)。これは正常な状態ではなくて、つまりDNAが損傷しているんです。水棲で乾眠しないクマムシでも同じことをすると、損傷の度合いも同じ。ところが、ヨコヅナは死なないのに、水棲のは死んでしまう。DNAの損傷が同じでも、片方は生きて、片方は生きのびるということは、DNAの損傷自体が死に直結しているわけではない。現在考えている仮説としては、ヨコヅナクマムシには紫外線を浴びてDNAを損傷しても、生命システムを維持できる能力があって、また、DNAの損傷の修復能力もすごい、と。実際、1日~2日ぐらいたってからヨコヅナのDNAをみると、もう元通り直ってるんですよ」