第2回 クマムシに出会ってひと目ぼれ

活動中のヨコヅナクマムシの電子顕微鏡写真。左が頭。(撮影:堀川大樹・行弘文子)
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「ある日、研究室のOBが来て、実際にクマムシを見せてくれたんです。一目見て、『あ、すごい、かわいい。これだ』っていう、直感みたいなものがあって。そこから文献をいろいろ検索してみたんですけど、ほとんど研究されてないって分かって、これはいける、と。私は性格上、誰もやってないマニアックなもののほうが、モチベーションが上がるんで。もう、これは理屈じゃなくて」

 当時、クマムシの研究者は日本でもせいぜい4人ほどで、それも分類学方面の研究者だったという。そこで、堀川さんは修士課程で北海道大学の大学院に入った際、腰を入れてクマムシ研究をスタートさせる。

「生態学の研究室だったので、クマムシの耐性と生態学をリンクさせようと考えました。オニクマムシという種類がありまして、世界中にいるんです。それを使って乾燥への耐性と、低温への耐性との関係を調べようと──」

 クマムシは乾燥だけでなく、マイナス200℃以下の超低温にも強い。それは「樽型」になった乾眠状態だけではなく、水を含んだ「生」のままの状態でも大丈夫なのだという。それほどの低温への耐性は、自然選択では説明できない。地球上にそんな猛烈な低温環境はないからだ。堀川さんは、地球上に普遍的にある「乾燥」ストレスへの耐性を身につけることで、副次的に超低温への耐性を得たのではないか考えた。

 人間を含む陸上の脊椎動物なら、体の中から水を出来るだけ逃がさないという方法で環境に適応してきた。一方、クマムシの場合、水がなくなっても死ななきゃいいじゃないか、という方向に進み、乾燥脱水耐性(アンハイドロバイオシス)を身につけた。そして、実は凍結することは、乾燥することと似ているのだという。