第1回 かわいい。けど、地上最強?

 というのは妄想にしても、耐性の機構を解明できれば、実用的な意義もあちこちで見つかるだろう。例えば、クマムシが放射線に耐える仕組みが分かれば、放射線の人体影響を減じる手段も見つかるかもしれない(今すぐ、というわけにはいかないのがつらいところだが)。

 さらには……放射線への耐性には、DNAを損傷から守る防護機構と、抗酸化作用の機構が想定されていて、それらが詳しく分かれば、いわゆるアンチエイジングなる方面への活用が可能、という考えもあるらしい。乾眠の仕組みの解明が、生鮮食品や医療用臓器の乾燥保存技術につながるかもしれないと聞いたこともある。

 というわけで、クマムシは「最強」+「かわいい」だけではなく、研究対象としてもチャーミングなことこの上ないのだ。

 世界のクマムシ研究は、この10年ほどの間に、盛り上がりを見せている。

 その背景に、一人の若き日本人研究者が大きな影響を与えていることを知り、話をうかがうことになった。

 アメリカのNASA・エイムズ研究センターを経て、現在はパリ第5大学・フランス国立衛生医学研究所を兼務する堀川大樹フェローだ。

パリで活躍中の堀川大樹さん。
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