雨粒にぬれたナスの花で、雨を惜しむように休むマルウンカの成虫(上の写真、体長6ミリ)。どこかせつなさを感じる。雨季もそろそろ終わり、乾季へと突入していくコスタリカ。

 雨量が減ってきて、直射日光が当たる時間が増えたので、わが家で栽培している研究用の植物に水をやり始めないといけなくなってきた。

 その中に、鉢植えのナスがある。

 もともとナスという植物はコスタリカには生えていなかったが、食用に栽培されていて、スーパーマーケットの野菜売り場にも置いてある。家のナスの木にも、ちゃんとぼくの好物のナスの実がなるが、かなり小ぶりで、スーパーのものの10分の1程度だ。

 収穫して料理するのも楽しいけど、ナスに入居する昆虫たちを観察するのもやっぱり楽しい。ツノゼミやマルウンカ、ヨコバイなど、もともとこの近所に生えているナス科の植物に住んでいた昆虫たちの幾種かが、わが家のナスに引っ越してきて、住みついてくれたのだ。

 いや~でも、ナスがこんなに人気があるとはビックリ! 庭の昆虫の多様性がグンとアップした感じ。

 小さな昆虫たちとナスの星型トゲトゲ毛が織り成すミクロな風景のマクロ写真をどうぞご覧ください~。  えっ? トゲトゲで昆虫たちは痛くないのですかって? ・・・おそらく痛くないでしょう。



マルウンカの一種の幼虫(カメムシ目:マルウンカ科)
A planthopper nymph (Hemiptera: Issidae)
マキビシのような形のナスの葉の毛の上で、お尻から筆の毛のような白いワックスを広げたり閉じたりしながら歩いている。「ようつまづけへんこっちゃ~」
体長:3.3 mm 撮影地:サン・イシドロ・デ・コロナド、コスタリカ(写真クリックで拡大)
エンティリア・カリナタ(カメムシ目:ツノゼミ科)、メス
Entylia carinata (Hemiptera: Membracidae), a female
メスは葉脈の1カ所に卵を少しずつ産み込んでいく。そしてその上を陣取り、じっと抱くように卵を守る。孵化するころには、もうお母さんツノゼミはいなくなっていた。
体長:4.8 mm 撮影地:サン・イシドロ・デ・コロナド、コスタリカ(写真クリックで拡大)
エンティリア・カリナタ(カメムシ目:ツノゼミ科)の1齢幼虫とアリ
Entylia carinata (Hemiptera: Membracidae) , nymphs and tending ants
左上の白い塊は、葉脈に産み込まれた卵。Forelius damianiというカタアリの一種が、そこから孵化した幼虫たちの面倒を見ている。アリが来ると幼虫たちはお尻を持ち上げ「どうぞ飲んでくださ~い」と甘露(糖分を含んだ液体の排泄物)を出す。
体長:アリ 2.4 mm, ツノゼミ 1 mm 撮影地:サン・イシドロ・デ・コロナド、コスタリカ(写真クリックで拡大)
西田賢司

西田賢司(にしだ けんじ)

1972年、大阪府生まれ。中学卒業後に米国へ渡り、大学で生物学を専攻する。1998年からコスタリカ大学で蝶や蛾の生態を主に研究。昆虫を見つける目のよさに定評があり、東南アジアやオーストラリア、中南米での調査も依頼される。現在は、コスタリカの大学や世界各国の研究機関から依頼を受けて、昆虫の調査やプロジェクトに携わっている。第5回「モンベル・チャレンジ・アワード」受賞。著書に『わっ! ヘンな虫 探検昆虫学者の珍虫ファイル』(徳間書店)など。
本人のホームページはhttp://www.kenjinishida.net/jp/indexjp.html

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