第3話  JAMSTECへの道 後編

その3  この研究を深海熱水でやりたい!!

そんなとき、あるポスターの前に人だかりができていた。そのポスターの題名は、「Some more like it cold(お熱いのがお好き)」。発表していたのはクリスタ・シュレパーという若いドイツ人女性だった。

それまで温泉とか深海熱水のような高温環境に生息する超好熱菌のグループしか知られていなかった古細菌(アーキア)の一部が、実はカリフォルニア沖の沿岸海水とか、北極や南極海とか、深海とかにかなりたくさん生息していることを、1990年代の初め頃、エドワード・デロングというスーパースターをはじめとする微生物生態学者が分子生態学的手法という新しい方法論を導入することによって発見し、いくつかの論文が『Nature』誌に発表されていた。つまり、古細菌は熱い環境だけが好きなヤツラだけじゃなく、冷たい環境も好きなヤツラもいる。ということで、Some like it coldというタイトルの解説記事が結構有名だった。

その後、ノーマン・ペースという大物微生物生態学者が、イエローストーン国立公園の温泉で同じような手法で、生息する古細菌の多様性を調べたところ、それまで知られていた超好熱菌とは全然違う、めちゃくちゃ多様な、ヘンな、そして起源の古そうな、古細菌がわんさかいることを見つけていた。その論文の解説記事のタイトルはSome more like it hot。

そして目の前にあるポスターは、冷たい海だけでなくて、冷たい湖にもそういうタイプの新しい古細菌がいるということを発表するモノだった。だからSome more like it cold。