第4回 田邊優貴子「牛乳と南極と私」

 しかし、そんなオーストラリアでの日々は今やもう信じられません。

 急激な寒さに加えて、今朝8時02分、幅200メートルの大きな氷山が初めて視認されました。

 亜南極~南極に棲息するハイガシラアホウドリやマユグロアホウドリ、ワタリアホウドリ、オオフルマカモメ、マダラフルマカモメ、まっすぐに南下しているおかげで、日々刻々と海の色や生き物が変わっていっています。

 夕方から少し船の動揺が大きくなってきています。

 さて、明日はついに南緯60度。

2011年12月5日 南緯56度、東経110度 しらせにて

月が浮かぶ亜南極の空。ハイガシラアホウドリが悠々と舞っていた。あんなに実感が湧いていなかったのが嘘だったかのように、私はすっかり南極への気分が高まっているのでした。(写真クリックで拡大)
渡辺佑基

渡辺佑基(わたなべ・ゆうき)

1978年、岐阜県生まれ。国立極地研究所生物圏研究グループ助教。世界の極地を飛び回り、データロガーを駆使して主に極域に生息する大型捕食動物の生理生態および種間比較を研究している。2011年「動物の泳ぐ速さを決めるサイズ効果を発見」(J. Anim. Ecol. 80, 57-68 (2011))が『Nature』の「News&Views」に紹介された。同年、学術分野全般で優れた実績を積み上げた人に贈られる山崎賞を受賞。

田邊優貴子

田邊優貴子(たなべ・ゆきこ)

1978年、青森市生まれ。2006年京都大学大学院博士課程退学後、2008年総合研究大学院大学博士課程修了。現在は、早稲田大学 高等研究所・助教。植物生理生態学者。博士(理学)。
小学生の頃から極北の地に憧れを抱き、大学4年生のときには真冬のアラスカ・ブルックス山脈麓のエスキモーの村で過ごした。それ以後もアラスカを訪れ、「人工の光合成システム」の研究者から、極地をフィールドにする研究者に転身する。
2007~2008年に第49次日本南極地域観測隊、2009~2010年に第51次隊に、2011~2012年に第53次隊に参加。2010年夏、2013年夏に北極・スバールバル諸島で野外調査を行うなど、極地を舞台に生態系の研究をしている。
ポプラビーチでエッセイ「すてきな 地球の果て」連載中
http://www.poplarbeech.com/chikyunohate/005708.html