“インカの失われた都市”マチュピチュ遺跡の発掘や、ジェーン・グドールのチンパンジー研究など、120年にわたり地球の不思議を解き明かしてきたナショナル ジオグラフィック協会支援の探検・調査が、このほど1万件に達しました。

 最初の支援は、協会設立2年後に当たる1890年。アラスカ州のセント・エライアス山への調査遠征です。そして今回1万件目の支援を受託する研究者は、インドの保全生態学者クリシー・カラント(32)。インド・西ガーツ山脈で野生動物と人との間に起きる摩擦、衝突を調査します。

 1万件到達を機に、ナショナル ジオグラフィック協会は「地球の理解を深めた支援探検・調査トップ10」を選びました。動画や写真、もっと詳しく知るための関連記事も紹介しています。ぜひご覧ください。



<地球の理解を深めた支援探検・調査トップ10(古いものから順に並べています)>

マチュピチュ遺跡のテントの前に立つ考古学者ハイラム・ビンガム。Photo provided by Hiram Bingham

■マチュピチュ遺跡の発掘(1912~15年)
 ハイラム・ビンガム(考古学者)

米エール大学講師だったハイラム・ビンガムが南米ペルー山中でインカ帝国の遺跡のひとつであるマチュピチュ遺跡を“発見”、ナショナル ジオグラフィック協会の支援でその調査、発掘が実施された。探査の物語は1913年4月号に186ページにわたり紹介された。

○関連する記事
2011年4月号「インカ 気高き野望」
2011年4月号「ハイラム・ビンガム マチュピチュにたどりついた男」



■南極点初飛行、南極大陸の6万平方マイルを空撮(1928~29年)
 リチャード・E・バード(探検家)

1929年、ナショナル ジオグラフィック協会が用意した太陽コンパスを携え、史上初めて南極点上空を飛行した。この遠征によって、南極大陸の山々が地図に加えられた。このうちグロブナー山とラ・ゴルス山は協会幹部にちなんで命名された。



ジャック・イブ・クストーと、彼の最新の水中探査艇(当時)。Photo by Thomas J. Abercrombie

■未知の水中生物の先駆的探査(1952年)
 ジャック・イブ・クストー(海洋探検家)

水中呼吸装置「アクアラング」を発明したクストーは、フランス・マルセイユ近海に沈んだ古代ローマの貨物船の発掘にはじまり、37回にわたって協会の支援を受け水中調査を実施、ナショナル ジオグラフィック誌に10本以上の記事を寄稿した。

○関連する記事
1998年2月号「沈黙の世界に挑んだクストーの生涯」



ケニアの調査地で発掘した化石を観察するルイス・リーキーと妻のメアリー。Photo by Melville B. Grosvenor

■アフリカ、初期人類の調査(1960年)
 ルイス・リーキー(古人類学者)

ジンジャントロプスの発見をはじめ、アフリカにおける人類の進化の解明に大きく貢献したルイス・リーキーは、1960年に最初のナショナル ジオグラフィックの支援を受け、以後、妻のメアリー、息子のリチャード、その妻のミーブ・リーキーと合わせて76の支援調査を行った。



チンパンジーの毛づくろいをしてやるジェーン・グドール。 Photo by Vanne Goodall

■野生チンパンジーのフィールド調査(1961年)
 ジェーン・グドール(霊長類学者)

チンパンジーが道具を用いること(植物の茎を使ったシロアリ釣り)を明らかにした。そのほかチンパンジーの行動について数多くの発見をなし、従来、人とチンパンジーを隔てると考えられてきた知性と文化の差は一挙に縮まった。

○関連する記事
2010年10月号「ジェーン・グドール チンパンジーを見つめた50年」
2003年4月号「霊長類研究者ジェーン・グドールの憂い」
1995年12月号「チンパンジー研究に35年 ジェーン・グドールの記録」



■レッドウッド国立公園の設立(1963~1968年)
 チェスター・C・ブラウン(米国立公園局)

雄大なセコイア(レッドウッド)の林が危機に瀕していたカリフォルニア州の太平洋岸では、国立公園局が協会の支援を受けて一帯を調査した。ナショナル ジオグラフィック誌は1966年7月号でその保護を訴え、68年に一帯はレッドウッド国立公園に指定された。

○関連する記事
2009年10月号「巨木の森と生きる」



■海底の地形図作成(1970年)
 ブルース・ヒーゼン、マリー・サープ(海洋学者)

それまでほとんど未知の領域だった世界の海底地形を、調査船を使って探査、史上初の海洋底の地形図を作成した。



■オオカバマダラの越冬地を発見(1975~1976年)
 フレッド・アーカート(生物学者)

季節ごとに渡りをする蝶オオカバマダラについて、長年の謎となっていた越冬地を、メキシコのシエラマドレで発見した。

○関連する記事
2010年11月号「動物たちの地球大移動」



■太平洋ガラパゴス地溝帯での熱水噴出孔の発見(1977年)
 ロバート・バラード(海洋学者)

ガラパゴス諸島沖海底の熱水噴出孔を有人潜水艇アルビン号で探査、世界で初めてチューブワーム(ハオリムシ)を発見、深海生態系研究の端緒となる。その後、バラードはタイタニック号の発見など難破船を数多く探査している。

○関連する記事
2004年5月号「海洋探検家バラード 黒海と地中海に挑む」
2002年12月号「PT109 ケネディの伝説の魚雷艇を探索」
2001年5月号「黒海からよみがえった古代の謎」



■生命の水中から陸への進化を示す化石の発見(2004年)
 ニール・シュービン(古生物学者)

カナダ北部の北極海にあるエルズミア島で、3億7500万年前の魚類化石を発見、その後の調査で、水中から陸へと生命が進出した過程のカギを握る生物であることが判明した。

○関連する記事
「生物の水中から陸への進化を伝える化石を発見」