そんな旅先で、私との出会いを喜んでくれたわけです。そのときの彼女の笑顔を思い起こして、私が彼女の旅の思い出の一部として残るのかなと思ったら、急に胸にこみ上げてくるものがあって。

 このようにその女将さんと過ごした1日が、まるで仏様と一緒にすごした1日みたいに思えました。

――いい出会いですね。屋久島の自然はどうでしたか。

 山歩きもしました。屋久島の森ってすごく神秘的ですよね。

 森の中を歩くうちに、ここは異空間だなと思いました。死んで朽ち果てたものの上に草木が生えていたり、切り株から何本も芽が伸びて、そこだけでひとつの小さな世界を創り出しているように見えたり、とにかく森の中が共生していて、共鳴している。

 山歩きの帰りは、霧の中を下りてきたのですが、町に下りて来た時に目の前に広がる景色が霧の中に投影された映像みたいだなと思ったりしました。

 そのときに気づいたんです。「今だと思ったら、すぐ行きなさい」と言った知人の言葉の意味が。ああ、そうかこういうことなんだと。

この連載の前回の
記事を見る

この連載の次の
記事を見る