第15回 ムラサキ「仮面ライダー」の三つの“必殺技”

 鮮やかな赤い花?
 ちがうんです~。この写真は花でも葉っぱでもなく、バッタが後ろ翅を広げたところ。
 敵に襲われたときの必殺技のうちのひとつ、鮮やか赤色威嚇~だ。

 この翅の主、カタハダバッタの仲間は、熱帯アメリカに生息していて、コスタリカでは約40種が確認されている。バッタの中では最も大きな体をもつグループで、体長が13センチ、翅を広げると25センチにもなる種もいる。

 幼虫も成虫もカラフルというのか、どこかグロテスクな色彩をしている。毒々しさをアピールしているのだろう。群れをなして、葉の表に堂々と居座っているところや、毒性がきつそうなサトイモ科の葉っぱなんかをムシャムシャと食べているところを見かける。飛ぶのはあまり得意でないみたいで、近くに寄っても、あまり逃げようとはしない。

 そんな堂々たる態度でいられるのは、このバッタが必殺技をいくつか持っているからだろう。敵の攻撃に遭うと、さきほどの「後ろ翅鮮やか赤色威嚇」のほか、胸からシューシュー音を放出~、さらには気門(呼吸をする穴)から異臭泡発射~!と、色、音、化学物質の三つの技で身を守る。

 仮面ライダーの新キャラへの起用とまではいかないかもしれないが、なかなかの技の持ち主だ。

タエニオポダ・マクシマ(バッタ目:カタハダバッタ科)、オス
Lubber Grasshopper, Taeniopoda maxima (Orthoptera: Romaleidae), male
ジャーンプ!をしても、どこか体が重そう。動きはバッタの中では「鈍い」ほうだろう。
体長:7 cm 撮影地:プエルト・ビエホ・デ・サラピキ、コスタリカ(写真クリックで拡大)
タエニオポダ・マクシマ(バッタ目:カタハダバッタ科)
Lubber Grasshopper, Taeniopoda maxima (Orthoptera: Romaleidae)
カメラと正面から向き合った。こんな高貴な色の仮面ライダーもいそうだな、と想像してしまう。
体長:7 cm 撮影地:カウイータ国立公園、コスタリカ(写真クリックで拡大)
西田賢司

西田賢司(にしだ けんじ)

1972年、大阪府生まれ。中学卒業後に米国へ渡り、大学で生物学を専攻する。1998年からコスタリカ大学で蝶や蛾の生態を主に研究。昆虫を見つける目のよさに定評があり、東南アジアやオーストラリア、中南米での調査も依頼される。現在は、コスタリカの大学や世界各国の研究機関から依頼を受けて、昆虫の調査やプロジェクトに携わっている。第5回「モンベル・チャレンジ・アワード」受賞。著書に『わっ! ヘンな虫 探検昆虫学者の珍虫ファイル』(徳間書店)など。
本人のホームページはhttp://www.kenjinishida.net/jp/indexjp.html