ほとんどの国では、保護に必要なスペースを確保するのが難しい。たとえば、200頭のユキヒョウやトラの群れを抱えるだけの広大な区域を新たに作ることができない。

 現存する自然保護区は規模が小さく、維持できるのは大型ネコ科動物のごく一部のみ。そのわずかな動物たちも、近親交配や病気、事故などによって絶滅しかねない状態だ。しかも、気候変動によって生態系が変化するなか、動物たちは新しい環境に適応するか、移住するか、さもなければ死ぬしかない。

 保護活動は従来のやり方を変え、複数の保護地域をバラバラにとらえるのではなく、全体を1つの保護地域として扱うようになった。最終的な目標は、人間が住まず開発も行われない、ヒョウやジャガーが安全に繁殖できる核となるエリアをいくつか配置し、モザイク状のシステムを作ることだ。核となるエリア同士は“ 回廊”によって結ばれており、ネコ科動物が1つの安全地帯から別の安全地帯へと移動できるようにする。それ以外の場所は人間用にする。この方法は、生態学的、経済的、そして文化的側面をふまえたやり方だ。

 私は、中国のチベット高原でユキヒョウを対象とした計画に携わっている。ユキヒョウの分布図をつくり、ヒツジの仲間のバーラルなど捕食される動物の数を推計し、地元の人々を野生動物のモニター役として訓練する。土地と家畜を効率的に管理するため、コミュニティや修道院と連携する。この作業は北京大学の山水自然保護センターと協力して行っている。 

 こうした計画において、構想を立てるのは簡単なことだ。衛星写真の地図上で候補地をあげ、大型ネコ科動物と人間が共存する夢の光景を思い描けばいい。これまでにも、問題点を明らかにして優先順位を決める会議はたくさん開催されてきた。しかし言葉ばかりが先行し、行動が追いついていないのが現状だ。

 すべての大型ネコ科動物は減少の一途をたどっている。ほとんどの国では、野生動物を保護する政治的な決意が欠けており、自然保護区の保全すら手薄になりがちで、密猟や違法伐採が横行している。各国で必要なのは、警察か場合によっては軍隊の支援を受けた精鋭の警備部隊、毛皮や骨の不法取引を阻止するための徹底した地域の協力、違反者に対する速やかな裁判などだ。結局のところ、保護とは政治である。そして、政治が大型ネコ科動物を殺しているのだ。