半世紀近く前、私は大型ネコ科動物の研究を始め、彼らの姿に魅了された。

 インドのカーンハ国立公園の森を悠然と歩むトラ。タンザニア・セレンゲティ国立公園でだらりと寝そべるライオンの群れ。ヒマラヤの険しい岩山を自由に動き回るユキヒョウ。ブラジルのパンタナール自然保護地域の広大な湿地を単身でさすらうジャガー……。

 しかし今日私は、野生の象徴である彼らの将来を憂えている。その運命が、ひとえに人間の手に委ねられていることを知っているからだ。

 1960年代~70年代に私たちが行っていた調査手法は、今なら時代遅れと言われることだろう。当時は、衛星画像を使って生息に適した土地を見つけることなどできなかったし、発信器を使った動物の追跡調査もまだ原始的なレベル、動物が近づくと自動的にシャッターが切れる赤外線センサー付きカメラもなかった。

 トラの顔の縞模様を見て個体識別をし、動物のフンをバラバラにして食べたものを特定、足跡をたどって移動範囲を割りだし、死体を1つ1つ調べて年齢と性別を確認した。保護活動は、こうして集めた情報をもとに行われているのだ。

 当時は、自然がこれほどのスピードで消えてしまうとは考えてもいなかった。人口は当時の倍以上に増え、森林は畑になり、野生動物は家畜の群れに取って代わられた。