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- 2011年12月号
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英語を変えた奇跡の聖書
王の命により400年前に刊行され、以後の英語に大きな影響を及ぼした欽定訳聖書の誕生物語。
世界のさまざまな言葉に訳され、広く読みつがれてきた聖書は、世界最大のベストセラーとも言われる。約2000年に及ぶその歴史の中、「英訳聖書の決定版」として誕生したのが、イングランド王、ジェームズ1世の命で生まれた欽定訳(きんていやく)聖書だ。
1611年に刊行されたこの聖書は、その格調高い文体と豊かな表現で、英国の文化はもちろんのこと、英語という言語そのものにも多大な影響を及ぼした。現在でも英語でよく使われている言い回しの中にも、from time to time(ときどき)、the haves and have-nots(富める者も貧しき者も)、East of Eden(エデンの東)など、この聖書がきっかけで広まった表現が少なくないという。
時の権力者の地位固めに貢献しつつ、個人に信仰の自由をもたらした欽定訳聖書の、誕生物語をお届けする。
今回、特集内に登場する聖書の引用部分を調べるため、東京・銀座にある日本聖書協会の聖書図書館に行ってきました。実際に手に取って調べ物に使ったのはごく普通の文語訳の聖書ですが、こじんまりとした館内の隅に置かれたガラスケースにはなんと! 1617年版の欽定訳聖書が展示されているではありませんか。欽定訳が刊行されたのが1611年ですから、そのわずか6年後の版です。大きさはちょっとしたボストンバッグくらいはあるでしょうか。今回の特集で欽定訳の歴史と影響力に触れたからこそですが、その重厚な存在感に、静かに興奮してしまいました。(編集M.N)
参考資料:『聖書 新共同訳 旧約聖書続編つき』1997年版 日本聖書協会
『舊新約聖書』(大形文語聖書)1982年版 日本聖書協会