植村はメンドサからボリビアを経てペルーのリマに入った。そこからさらにオンボロのバスに乗ってイキトスへ。イキトスはアマゾン河の上流部にある大きな町で、ここに来てアマゾン河6000キロの河下りの可能性を考えるのである。

 アマゾン河の河下りは、フランスを発つ前からぼんやりした夢というかたちながら構想はあった。モルジンヌ出発が目前に迫ったとき、南米でやってみたいこととして、覚え書に書き留めてあった。そしてアコンカグア単独登頂だけでは満足せず、イキトスまでやってきてその可能性を考えるのである。例の「これぐらいやらなければ、誰もオレを認めてくれない」という思いが、ここでも植村の背中を押す。

 現地在住の日本人数名に相談し、そのアドバイスを受けながら、彼はイカダが最上の手段だと決心するに至った。そう決めれば、あとは実行あるのみ。手帳には、イカダが出来あがるまでは克明に悩みや手順がつづられているが、出発してからは記載がパタと途絶える。その冒険の詳細は、『青春を山に賭けて』の「六十日間アマゾンイカダ下り」の章に描かれている。

 出発して62日目、6月20日に河口の町マカパ(ブラジル)に到着。

 アコンカグア単独登頂と、アマゾン河6000キロのイカダ下りの冒険と、南米での2大目標は達成された。だが、私が驚くのはこれで日本にまっすぐ帰国しないことである。

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