第6章 『青春を山に賭けて』の時代〔その1〕後編

 司令官は植村の熱意にほだされたのか、あるいは相手にしていることに飽きたのか、ついに許可を下した。そして手袋や防寒具を貸してやるから持っていけ、といった。植村は、

「山登りは自分の足でやるもの。自分の装備でやるものだ」

 と見栄をきった。そして、直ちにアコンカグア頂上めがけて出発。周囲から20日かかるといわれたのを、わずか15時間で登頂してみせた。頂上に雪はなく、奥穂高岳のそれのように平たい。置いてあった手帳に、「一九六八年二月五日午後二時十五分、植村直己」と書きこんだ。

アコンカグア登頂単独登頂後、将校や兵と記念撮影。
(写真提供:文藝春秋 (c) Bungeishunju)
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