第5回 オオサンショウウオの未来を守れ

 栃本さんはこんな昔話を聞かせてくれた。

「朝日新聞の夕刊一面に動物の写真を見せるコーナーがあって、東京本社から水中撮影隊が来たんです。それで、オオサンショウウオが真冬に餌を食べてる写真を撮って、大喜びで帰ったんですよ。そうしたらデスクがね、晩飯食う時間帯に見る夕刊にそんな写真は駄目だって。気持ち悪い動物だって思われていたんだね」

 それが20年か30年前のことだそうだが、最近になって変わってきたかもしれないという。

日本ハンザキ研究所の脇を流れる市川。(写真クリックで拡大)

 栃本さんが、ハンザキ研究所で行っている観察会は毎回、満員状態だ。面白いのはカップルでは女性主導の場合が多く、親子連れだとまず大人が夢中になる。地元の人たちも、町おこしの一貫としてオオサンショウウオグッズを作り、巨大な「ハンザキ抱き枕」がヒット作になった。

 というわけで、オオサンショウウオの魅力は徐々に浸透し、多くの人に認識されつつあり、この連載もひょっとするとそれに寄与することになると思う。

 実際、日本の川の最大の生き物であり、かくも魅力的であり、法律上も守るべし、ということになっているわけで、そのまま、生態系の頂点にいる「傘の種」(アンブレラ・スピーシー)=「川の守り神」として手厚く保護されればいいと素朴に思う。

 オオサンショウウオが繁殖し、次々と新しい世代が育ってくる川は、健全な川だ。

オオサンショウウオグッズの展示室にて。(写真クリックで拡大)

おわり

栃本武良(とちもと たけよし)

1941年、東京都生まれ。NPO法人日本ハンザキ研究所所長。東京水産大学卒業後、生物科の教諭を経て、姫路市立水族館建設準備室着任。 昭和50年よりオオサンショウウオの生態調査を始める。 平成6年から姫路市立水族館長を11年間務め、退職後、日本ハンザキ研究所を設立。『大山椒魚』(解説、ビブロス)、『生物による環境調査事典』(編著、東京書籍)、『環境保全学の理論と実践3』(共著、信山社サイテック)、『これからの両生類学』(共著、裳華房)などの著書がある。
日本ハンザキ研究所のホームページhttp://www.hanzaki.net/

川端裕人(かわばた ひろと)

1964年、兵庫生まれ。作家。98年、小説『夏のロケット』で第15回サントリーミステリー大賞を受賞。少年たちの川をめぐる物語『川の名前』、自身の体験を元にした『PTA再活用論 ──悩ましき現実を超えて』、感染症制圧の10日間を描いた小説『エピデミック』(角川文庫)など、多岐のジャンルにわたり多数の著書がある。近著は学校の「いま」と家族、地域の「在り方」をリアルに描いた長編エンタテインメント『ギャングエイジ』(PHP研究所)。
著者自身によるブログは「リヴァイアさん、日々のわざ」。ツイッターのアカウントは@Rsider