第4回 「謎の首切り死体事件」の犯人は?

 栃本さんがまたも笑いながら説明してくれた。

「この2回とも皆勤賞の勤勉なやつ、成長、ゼロ! 17年追跡しててゼロ。で、1週間にいっぺんのやつの方がずっとよくて、十何年かで5.5センチの成長!」

 重役出勤するやつが、毎日狩りをする勤勉君よりも、ずっと成長しているとは!

 なんともいえない皮肉な調査結果だ。

 勤勉君はよほど要領が悪いのか。一方、重役君は、週一の出勤で、まずまずの成長を遂げている理由は? いろいろと想像が広がる。きっとその先には、「個性」についての研究も構想できるだろう。

 以上、研究スタイルの違い、などと書いてはみたけれど、田口さんのこういった研究は、栃本さんら先達が、個体識別をひたすら進めてきたこと、さらに繰り返し観察して記録してきたデータを参照してはじめて意味のある広がりを持つ。

 今後、日本ハンザキ研究所が蓄積しているデータを活用して、次世代の研究が生まれることは間違いない。

つづく

栃本武良(とちもと たけよし)

1941年、東京都生まれ。NPO法人日本ハンザキ研究所所長。東京水産大学卒業後、生物科の教諭を経て、姫路市立水族館建設準備室着任。 昭和50年よりオオサンショウウオの生態調査を始める。 平成6年から姫路市立水族館長を11年間務め、退職後、日本ハンザキ研究所を設立。『大山椒魚』(解説、ビブロス)、『生物による環境調査事典』(編著、東京書籍)、『環境保全学の理論と実践3』(共著、信山社サイテック)、『これからの両生類学』(共著、裳華房)などの著書がある。
日本ハンザキ研究所のホームページhttp://www.hanzaki.net/

川端裕人(かわばた ひろと)

1964年、兵庫生まれ。作家。98年、小説『夏のロケット』で第15回サントリーミステリー大賞を受賞。少年たちの川をめぐる物語『川の名前』、自身の体験を元にした『PTA再活用論 ──悩ましき現実を超えて』、感染症制圧の10日間を描いた小説『エピデミック』(角川文庫)など、多岐のジャンルにわたり多数の著書がある。近著は学校の「いま」と家族、地域の「在り方」をリアルに描いた長編エンタテインメント『ギャングエイジ』(PHP研究所)。
著者自身によるブログは「リヴァイアさん、日々のわざ」。ツイッターのアカウントは@Rsider