第3回 オオサンショウウオの知られざる生態

「シーボルトがオランダに持っていったやつですね。あれはアムステルダムの動物園で飼育下で51年です。向こうにはオオサンショウウオがいないから、入れ替わりようがないし。おまけに面白いのは、最初は2頭船に乗せていて、航海の途中で、でかいほうが小さいほうをかみ殺したと。そのかみ殺された、傷のある標本を、この前、彼が見てきたんです──」

夜間調査でも活躍した田口勇輝さん。(写真クリックで拡大)

 彼というのは、研究員の田口さんだ。

「ちょっと丸まってる標本なんでね、測りにくいんですが、70センチ以上はあったんですよ。そいつをかみ殺したもっと大きいやつが、その後、51年生きたわけです」と田口さん。

 栃本さんがふたたび話を引き取った。

「そういうことを考えると、100年以上は軽く生きるんだろうというふうにはやはり思ってるんだけど、ホントのところはねぇ──」

 栃本さんは、本当に遠くはるかかなたの時間のはてを見るような目つきで言うのだった。

つづく

栃本武良(とちもと たけよし)

1941年、東京都生まれ。NPO法人日本ハンザキ研究所所長。東京水産大学卒業後、生物科の教諭を経て、姫路市立水族館建設準備室着任。 昭和50年よりオオサンショウウオの生態調査を始める。 平成6年から姫路市立水族館長を11年間務め、退職後、日本ハンザキ研究所を設立。『大山椒魚』(解説、ビブロス)、『生物による環境調査事典』(編著、東京書籍)、『環境保全学の理論と実践3』(共著、信山社サイテック)、『これからの両生類学』(共著、裳華房)などの著書がある。
日本ハンザキ研究所のホームページhttp://www.hanzaki.net/

川端裕人(かわばた ひろと)

1964年、兵庫生まれ。作家。98年、小説『夏のロケット』で第15回サントリーミステリー大賞を受賞。少年たちの川をめぐる物語『川の名前』、自身の体験を元にした『PTA再活用論 ──悩ましき現実を超えて』、感染症制圧の10日間を描いた小説『エピデミック』(角川文庫)など、多岐のジャンルにわたり多数の著書がある。近著は学校の「いま」と家族、地域の「在り方」をリアルに描いた長編エンタテインメント『ギャングエイジ』(PHP研究所)。
著者自身によるブログは「リヴァイアさん、日々のわざ」。ツイッターのアカウントは@Rsider