第1回 激録・オオサンショウウオ夜間調査

 オオサンショウウオはこの時期、川岸に開いた巣穴にオスが陣取って、メスを招き、産卵授精を行う。巣として好まれる場所として、穴の奥からの湧水があるところ、という条件があり、良い場所は限られるので、オス同士の闘争もある。

 勝ち残ったオスの巣穴にはメスが招かれ卵を産む。そして、産卵行動が始まると、いったん闘争に負けたオスたちも巣穴に入ってきてちゃっかり放精するというドラマ(?)が毎年繰り返される。最後の最後はみんなが授精のチャンスにありつくいい加減さがなんともいえない。それでも、ヌシは巣穴の奥で卵をゆり動かしながらずっと守り続けるのだという。

 さて、ぼくたちが(というか、正確には田口さんが)みつけた卵は50個くらいあり、ひとつひとつの直径が2~3センチメートル。1回の産卵で300~700個の卵を産むそうだが、おそらく台風の増水の影響で流出したものらしい。

 流水の中で見る卵は、砂をかぶってはいるものの、純粋に美しかった。ライトを反射して卵黄がきらきら光る。水晶の中に黄金を閉じ込めた球を、いくつも連ねた首飾りみたいだった。たぶん受精卵だが、放置すると、食べられたり、カビにやられたりして、結局は全部死んでしまうので、緊急保護ということでハンザキ研究所に持ち帰って孵化させることになった。

 ほくほくしながら宿に帰り、翌朝、田口さんに案内されて、会話の中で何度も出てきたトチモトさんこと、栃本武良所長が待つ日本ハンザキ研究所を訪ねた。 

(動画撮影:川端裕人)

つづく

栃本武良(とちもと たけよし)

1941年、東京都生まれ。NPO法人日本ハンザキ研究所所長。東京水産大学卒業後、生物科の教諭を経て、姫路市立水族館建設準備室着任。 昭和50年よりオオサンショウウオの生態調査を始める。 平成6年から姫路市立水族館長を11年間務め、退職後、日本ハンザキ研究所を設立。『大山椒魚』(解説、ビブロス)、『生物による環境調査事典』(編著、東京書籍)、『環境保全学の理論と実践3』(共著、信山社サイテック)、『これからの両生類学』(共著、裳華房)などの著書がある。
日本ハンザキ研究所のホームページhttp://www.hanzaki.net/

川端裕人(かわばた ひろと)

1964年、兵庫生まれ。作家。98年、小説『夏のロケット』で第15回サントリーミステリー大賞を受賞。少年たちの川をめぐる物語『川の名前』、自身の体験を元にした『PTA再活用論 ──悩ましき現実を超えて』、感染症制圧の10日間を描いた小説『エピデミック』(角川文庫)など、多岐のジャンルにわたり多数の著書がある。近著は学校の「いま」と家族、地域の「在り方」をリアルに描いた長編エンタテインメント『ギャングエイジ』(PHP研究所)。
著者自身によるブログは「リヴァイアさん、日々のわざ」。ツイッターのアカウントは@Rsider