第5章 現地から届いた手紙 後編
食事は一日一食、一日の行動終了後、犬に与えたカリブーの凍肉の残りを2、3個テントに持ち込み、紅茶とビスケットと共に可能なかぎり胃につめ込める。朝は紅茶をとるが、日中冷えこむ体に、素手になりマッチに火をつけ、石油コンロをたく動作がたいへんで殆んどとらず。思うように狩ができないことや、グリーンランド以上に寒いマイナス40℃50℃という気温、位置のつかみどころのない単調なツンドラに、前半と違った真冬の旅の厳しさがあります
これからは、パウラトックで2、3頭の犬をとりかえ、15頭の犬で出発予定。
2月3日 | パウラトック出発 |
2月中旬 | タクトヤクトック到着(5日~7日休養) |
3月上旬 | カナダよりアラスカ国境入り |
3月下旬 | 石油の基地プルドー湾通過 |
4月中旬~下旬 | ポイントバロー到着 |
5月中旬~下旬 | コツビュー到着、終了 現在のところ可成り予定より遅れているので、ノームまで下ることは不可の模様です。 |
※日記はタクトヤクトック到着時、郵送致します。
お金はこのパウラトックに入り、2月1日イエローナイフから送られてきました。これで全金額受けとりました。
後半の旅は先に述べましたように決して順調とはいえませんが、遅れながらも、どうにか少しずつ、西へ向け前進しています故、何とか今春までにアラスカ・コツビュー到着を果したいと思っております。このために後半の旅は、少しでも早く進めるべく、可能な限りエスキモー部落で元気な犬を手に入れ、とりかえてゆくことにしています。
タクト到着後、また連絡致します
パウラトックにて 2月2日
植村直己》