自分が来週には死んでいるかもしれないと思うと、何とも気が滅入ってくるものだ。

 1週間前、私は「ナショナル ジオグラフィック」誌の撮影でウガンダの洞窟の奥深くにいた。10万匹のエジプトルーセットオオコウモリのねぐらを撮影するためだ。ニシキヘビやシンリンコブラに警戒しつつ、注意深く足を踏み入れたが、後から起きることに比べれば、そんな心配は取るに足らないものだった。

 夕暮れに洞窟から外に出てくると、防護用マスクと眼鏡を外した。すると頭上でとんでもなく大きな音がした。ぜんまい仕掛けのおもちゃ1000個が一気に動き出したような音だ。そして熱い突風が吹いた。洞窟にいたコウモリが一斉に飛び立ち、夜空へ羽ばたいていったのだ。

 私はほんの一瞬、頭上を見上げた。すると左目にフンがぼとりと命中した。熱くヒリヒリする感覚だった。それがコウモリにかまれるのと同じくらいタチの悪い「直撃」だということは分かっていた。

 キャンプに戻ると、すぐに疾病対策センターに電話をかけた。エジプトルーセットオオコウモリについて何らかの情報が得られるかもしれない。電話の相手は長い沈黙のあと「そこに行くべきじゃなかった」と言った。「あの洞窟にはマールブルグ・ウイルスが蔓延してるんです」それを聞いた瞬間、汗がどっと流れ始め、涙があふれてきた。

 マールブルグ・ウイルスは残酷な死を引き起こす。エボラ・ウイルスと似ていて、出血熱(要するに、体のあちこちから血が出る)を起こすのだ(違いといえば、場合によってはマールブルグ病の方が少し早く死ぬことくらいだ)

 もし私が感染していれば、ウイルスとの接触の3日後から21日後までに症状が現れるだろう。症状は激しい頭痛や臓器不全。あまりの高熱のため、生き延びたとしてもその間の記憶は失われている。アフリカで治療を受けた場合の致死率は90パーセントだ。「今すぐ帰国しなさい」と電話の男は言った。「人に伝染する可能性が生じる前に」