第2回 “命のつながり”を求めてセレンゲティへ
セレンゲティをフィールドに選んだのは、その前に写真集『海からの手紙』を出したときですね。次をどうするか考えたんです。
『海からの手紙』では、世界30カ国くらい歩きましたけども、そういう通り過ぎていく旅人の目ではなく、そこに住む人の目で動物や自然を撮りたいと。
地球儀を回しながら考えたりして、やっぱりセレンゲティかなと思ったんです。
――どこに魅せられたのですか。
やはり、大型哺乳動物がたくさんいるということ。これが第一です。それと、生きもののつながりが見えるということですね。
雨期に雨が降り出し、草が芽生えると草食動物たちが集まってくる。その草食動物を肉食動物が追う。そして、食べられた者は土に返るという、草食動物と肉食動物の物語が、セレンゲティなら自然のさまざまなつながりとともに撮れると思いました。
――食物連鎖ですか。
そうですが、今にして思えば「食う者と食われる者」の関係というような単純なものではありませんね、自然の生きもののつながりは。ものすごく複雑です。それは、よく言われる「生物多様性」という言葉でもくくりきれないような気がします。
生きもののつながりは、わからないことだらけだし、そのわからないところが一番の魅力です。