オオカミの夢をみたときも、この話をすぐに思い出しました。

 自分の人生にとって、もっとも大事な選択になるかもしれない最初の撮影テーマ。それを、夢を見て決めただなんていったら、笑う人もいるかもしれません。でも、ぼくには悩む間なんてなく、すぐにジムの写真集と出会い、心はすでにオオカミの暮らすミネソタの森に飛んでいました。

 きっとどんなに悩んだところで、「何が自分にとって最も適したテーマなのか」という答えは見つかりっこなかったでしょう。どんなきっかけであれ、一度心に決めてしまえば、そこから先は、答えそのものの中を生きてみることになるのではないでしょうか。

 だから、ツァータンの話を聞いて、オオカミの夢を見た後、ぼくはこんなふうに考えはじめていました。

 <夢からスタートしてみる生き方があってもいいじゃないか。人に迷惑をかけるわけじゃない。その先、いったいどんな人生が待っているのか、しっかりとこの目で見届けてみよう……>

 ダルースのホステルにたどり着いたものの、最初の目的地であるイリーまでの交通手段が見つからなくて途方に暮れていたぼくに、助け舟を出してくれたのは、奇しくも、これらの夢の話がきっかけでした。

つづく

大竹英洋

大竹英洋(おおたけ ひでひろ)

1975年生まれ。写真家。一橋大学社会学部卒業。1999年に米国のミネソタ州を訪れて以降、北アメリカ大陸北部に広がる湖水地方「ノースウッズ」の森に魅せられ、野生動物や人々の暮らしを撮り続けている。主な著書に『ノースウッズの森で』(「たくさんのふしぎ傑作集」)、『春をさがして カヌーの旅』(「たくさんのふしぎ」2006年4月号)、『もりのどうぶつ』(「こどものとも 0.1.2.」2009年12月号)(以上、すべて福音館書店)などがある。また、2011年3月NHK BSの自然ドキュメンタリー番組「ワイルドライフ カナダ ノースウッズ バイソン群れる原生林を行く」に案内人として出演。近著は「森のおく 湖のほとり ノースウッズを旅して」(月刊 たくさんのふしぎ 2012年 09月号)
本人によるブログは「hidehiro otake photography」

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