特別番外編  「しんかい6500」、震源域に潜る

その3  震源の海底で、地震に遭う

水深3600mという栄養の乏しい深海では普段目にすることのほとんどない生物に満ち溢れた世界が、そこには広がっていた。科学的な結論を出すのは早いけれども、その場で観察したボクには、深海の生態系は暗黒の世界に訪れた「生の息吹」を謳歌しているとしか思えなかった。そしてその「生の息吹」をもたらしたモノ、それが、超巨大地震だったと思えるのだ。

7時間半の潜航が終わり、ボクは船上に戻ってきた。潜航終了後はやるべき仕事が満載だったので、特に潜航についてじっくり振り返る余裕はなかった。

しかし、しばらくたって振り返ると、今回の潜航はボクにとってはとても奇妙な体験だったと思う。潜航する前、すこし不安に感じていた深海底での地震との遭遇。実際「しんかい6500」の中にいたボクらには、その揺れや海底の変化はまるで感じられなかった。でも地震との遭遇は、暗黒の深海底の生命の営みの本質が、地球の活動と強く結び付いているという感覚を強烈に呼び覚ましてくれた。

科学的な現象としての地震による「生態系の破壊と創造」は、今回の潜航を初めとする調査研究での観察、得られた試料やデータの解析と解釈から、近い将来、それを明確に示すことができるだろう。