特別番外編  「しんかい6500」、震源域に潜る

その3  震源の海底で、地震に遭う

2回目の緊急地震速報により漂流中の「しんかい6500」がきっちりマークしていた微生物マット。
(提供:高井研)

どうやら今度は船上の管制も考えたようで「いつでも浮上できる態勢をとりつつも、調査が続行できる微妙な態勢をとれ」ということらしい。今度は笑いながら、「何か起きませんかねー、ワクワク」とボクらは窓の外を観察していた。チバさんは漂流しながらも、ちゃっかり潜水艇を操縦し、ベストポジションに誘導している。

そしてすぐに漂流待機指令は解除された。

いつのまにか海底を覆っていた濁りが晴れ、まるで呪縛から解き放たれたかのように、それからの調査・作業はうまくいった。そしてよく目を凝らして海底を観察すると、ボクは、水深3600mの海底とは思えないほどの多様な生物がそこにいることに気が付いた。

微生物マットが点在する海底の周りには、ユムシのような動物が泥の上を這いずり回っていた。昔の西部劇映画で砂漠をころころ転がる「ころころ草」(ニックネーム)のようなイソギンチャク、ブックブックにメタボ肥大化したナマコや泥の上に立つキャラウシナマコやセンジュナマコ。這いずり後をいっぱい残す巻き貝や小さな二枚貝。そして、悠然と泳ぐ丸々と太った錦鯉(ニックネーム)や超高速で「しんかい6500」に喧嘩を吹っ掛ける元気よすぎる雷魚(ニックネーム)。