特別番外編  「しんかい6500」、震源域に潜る

その3  震源の海底で、地震に遭う

案の定、微生物マット探しは難航した。潜航前には、海底下の断層に沿って直線状にズラーと微生物マットが広がっていると予想していたのに、思ったよりも広がりが乏しい。断層から漏れ出ずる「地震汁」なんてないんじゃないのか? 強い不安がよぎる。

そしてようやく、それなりの規模の微生物マットを見つけて、その試料採取に取りかかろうとした矢先、音響通信に船上からの指令が飛び込んできた。

「現在、潜航地点近くで地震発生。次の指示があるまで高度40mまで浮上待機」

どうやら安全基準に引っかかりそうな地震があったらしい。「ありゃー、せっかく着底したのに、この浮上でもう元の位置には戻れませんよ」とパイロットのチバさん。しかし実際のところ、船上からの指令があった時は、既に地震が起きた後なわけで、海底のボクらはまったく何の変化も感じなかった。

でも、ちょっと憂鬱でメランコリックな気分だったボクはなんとなく楽しくなってしまった。チバさんもイシカワさんもちょっとワクワクしている感じだった。「深海で地震に遭遇するなんてなかなかない機会ですからね。こりゃ良い経験だわ。よっしゃ、この空白の時間に昼飯食おう」。ボクはお弁当のおにぎりをほおばった。