ぼくはおもわず嬉しくなって、胸がどきどきしました。

〈想像すらできなかったイリーという町に、実際に行った人が目の前にいる……確かに目的地に近づいているぞ!〉

 しかし、そのすぐ後にグレッグの口からでた言葉に、今度は胸が締め付けられるような思いがしました。

「でも、イリーまでのバスはないよ。前はあったような気がするけど……」

 バスがない? ぼくは、にわかに信じられませんでした。どんなに小さくてもイリーは地図に乗っている町。それなのにバスがないなんてことがあるのだろうか。

 日本ならどんな山奥でも、集落があればバスはあると思っていました。たとえ一時間に一本、いや、一日に数本だったとしても。もしバスがなければ、車を持っていない人や高齢で乗れなくなった人にとって、町から外に出る手段がなくなってしまいます。

 実際、日本で山登りをしていたときも、山奥でバス停をみつけて感心したことが幾度もありました。だから、公共の交通機関というものは、社会が持つべき当然のインフラだと無意識のうちに思いこんでいたのです。

 釈然としなくて、どうしてバスがないのかグレッグに聞きました。

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