特別番外編  「しんかい6500」、震源域に潜る

その2  端的に言うと「ちょっとビビッていた」

潜航調査の対象は、日本海溝の陸側斜面の海底下にしばしば観察される巨大な正断層の直上海底。一説には東北地方太平洋沖地震ではこの断層が大きく動いた可能性も指摘されているというきな臭い場所である。事前の深海曳航カメラ観察では、断層直上海底にフレッシュに見える微生物マットが広がっていた。

この微生物マットは、地震による地殻変動で思わず漏れてしまった「海底下汁」に含まれていたであろうメタン、さらに言えばもしかすると水素、によって急遽海底に出現した「地震微生物生態系」の一部と予想されたのだ。つまり普段なら「すかすこと」ができていた放屁が、超巨大地震という「人生上最も危険な破局的モヨオシ(ビッグウェーブ)」により「すかす」どころか、禁断の・・・という状況になったと想像していただきたい。

そういう「下ネタ」、いやもとい「地震汁や地震微生物生態系」が調査対象ならボクの出番だ。いつもの「しんかい6500」の潜航調査と同じように、ボクはいくぶん緊張した朝を迎え、潜航準備に取りかかっていた。

じつはこの調査航海が始まる前から、研究航海に参加することとは別に、ボクは今回「しんかい6500」で潜航したいような、潜航したくないような、微妙な気持ちがあった。