その徹底ぶりをもう一つ挙げるとすれば、これは植村のほうから望んだことではないけれど、イヌートソアとナトック老夫婦の養子になった一件である。

 イヌートソアは、シオラパルクの村長である。経験も多く、知見も広く、適役と思われる人物だ。

 冬が近づき、浜辺が凍りついて日課でやっていたマラソンが危険になったとき、植村はマラソンのかわりに、イヌートソアの家まで浜辺に打ちあげられる氷を運ぶ作業をすることにした。氷塊は溶かして真水にする必需品だが、浜辺から遠いイヌートソアの家まで運ぶのは、老夫婦にとってはかなりの重労働である。植村は自分が代わってそれを実行した。

イヌートソア夫妻と植村直己。(画像クリックで拡大)
(写真提供:文藝春秋 (c) Bungeishunju)

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