第4章 先住民に学ぶ 後編

 シオラパルクから75キロ離れたカナックへ初めて犬橇旅行したのは、グリーンランドに住んで約2カ月後だった。初めて会った人びとの前で排便できず、植村は身もだえる。

 それでも半月もすると、カナックの人たちの前でも堂々と大便ができるようになった。「カナックの娘たちも話しながら尻をまくり、小便をするようになって、私との間にはなんのこだわりもなくなっていた」と彼は書きつけている。そしてそのユーモラスともいえる光景を語ったあとで、彼は改めて、という感じで言葉を継ぐ。

《私はこれまで四十カ国ばかりの国々を歩きまわってきたが、これほど風俗習慣のちがいを身にしみて感じたことはなかった。「習慣に従う」ということばは、頭の中でこそ理解できても、いざ実行するとなるとなかなかむずかしい。私もはじめは彼等の排泄習慣になかなかなじめなかった。私は「エスキモーと生活をともにする」という以上、食生活を同じにするだけでなく、同じ排泄行為をとることができるという条件もつけ加えなければならないと思っている。》(『極北に駆ける』「私の犬橇訓練計画」)

 いわれてみればその通り。みごとに徹底している。