第4章 先住民に学ぶ 後編

 エスキモーと同じものを食べることが、彼らと生活を共にする最初の、必要欠くべからずの第一歩であると、植村はしっかり自覚していた。しかし、シオラパルク第1日目に、歓迎されているのか試されているのかよくわからないままに、天井からぶら下がっている赤黒い生肉を勧められたとき、いかに困惑したか。それについては第3章の「冒険家の食欲」でくわしく述べたから、ここでは省略する。

 ただ注目すべき一つのことに言及しておきたい。植村はわずか1週間でこの生肉食になれるのである。そしてアザラシ、セイウチ、トナカイ、クジラなどの生肉を味わい分け、どの動物のどのあたりがうまいかを知るようになった。先に引用したように、「どこへ行ってもその土地のものがおいしく食べられるので、ありがたい」と植村自身がいう通りである。

 アパリアスという渡り鳥の、アザラシの皮下脂肪漬け――キビヤックという、私にとっては聞くだけで薄気味悪いエスキモーの御馳走がいつのまにか大好物になる。また、植村は犬橇の操縦ができるようになった頃は完全に猫舌になった、と書いている。エスキモーは凍った生肉を叩き割り、ナイフでそいで食べるから、みんな猫舌で熱いものは受けつけない。植村もエスキモーと同じようになった、と胸をはっているのである。