第4章 先住民に学ぶ 後編

(承前)
 1972年9月4日、植村直己はグリーンランド最北端の村シオラパルクに入った。そこでエスキモーから犬橇の操縦法を学ぶ。また寒気への対策法をはじめ、極地でのさまざまな生活技術を学ぶ。そういう大きな目的があった。くりかえしいうように、南極大陸を単独で、犬橇を走らせて横断したいという夢が、目的の背後にはあった。

シオラパルクの村にて。植村はたちまち先住民に溶け込んだ。
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(写真提供:文藝春秋 (c) Bungeishunju)

 エスキモーの集落に単身で入り、ともに暮らしたこのときの記録が、『極北に駆ける』(1974年刊、現在は文春文庫)である。この一冊には、植村がエスキモーという先住民に何を、どのように学んだかが満載されている。

「学ぶ」といっても、もちろん誰かの講習を受けたわけではない。エスキモーの家で、また後には村内の廃屋に移り住んで、エスキモーとつきあいながら日々を暮らす。それが学ぶということだった。そして学んだ成果を試すために、グリーンランド東海岸を3000キロ、ひとりで犬橇による旅をした後、グリーンランド滞在を切りあげた。