第4章 先住民に学ぶ 前編


 植村直己の冒険の方法の一つは、先住民に徹底的に学ぶということだった。とりわけ彼の輝かしい冒険記録となった極地での行動は、エスキモーに学ぶことから始まり、それによって身につけたサバイバル技術によって可能になったといってよい。

 その結果、彼の冒険はきわだった表情をもつことになる。それは、自然を征服するのではなく、自然にしたがうこと、適応するということである。順化する、という言葉を使ってもよい。

 科学技術に裏打ちされたさまざまな道具をフルに用いて、自然を征服するという方向は、19世紀に最盛期を迎えた西洋の探検や冒険で確立された。人間の力で、自然を屈服させる。そういう方向である。

グリーンランドの犬橇は扇状に犬をつなぐ。犬橇の操縦方法はエスキモー直伝だった。(写真クリックで拡大)
(写真提供:文藝春秋 © Bungeishunju)