第2章 1888-1900 ゆりかごの時代

第11回 “下品”と“低俗”

   ギルバート・グロブナーが編集補佐になり、『ナショナル ジオグラフィック』の部数が増えはじめる少し前、グラハム・ベルは「すぐれた地図や動きのある写真をたくさん使うように」というアドバイスをグロブナーに送っていました。

 当時は雑誌の写真に“低俗”というイメージがありました。「写真の複写などすぐに飽きられてしまい、1枚1枚ていねいに手で描いたイラストのほうが人気が出る」と誌上で公言していた超大物編集者もいたぐらいです。

 にもかかわらず、その頃にしてはとても“進んだ”考えをベルがすすめたのは雑誌『マクルーア』の成功と関係があります。

『マクルーア』は1893年に創刊された、政治と文学が主なテーマの月刊誌です。『ナショナル ジオグラフィック』より5年後発なのに、創刊7年後には37万部もの売り上げを記録していました。

 この雑誌が売れるきっかけが写真を使った記事だったのです。

 創刊から約1年後、『マクルーア』をなんとか軌道にのせようと悪戦苦闘していたサミュエル・S・マクルーアは、ある日、グラハム・ベルの義父「ガーディナー・ハバードがナポレオンにまつわる写真を持っている」という耳寄りな話を聞きつけます。