第9回 頬を赤らめてこちらを見つめる視線は・・・
赤みをおびた顔で、葉っぱの陰からそっとこちらをうかがうキリギリス。
顔がデカイ。4頭身ほどだろう。独特な雰囲気があって、とても“おちゃめ”なやつだ。でも撮影しようとすると木や葉の陰にかくれてしまう。恥ずかしがり屋さん?
「写真を撮らせて下さい~」と、首根っこをつかんで葉の上に乗せようとした。その瞬間、
「あたたたたた~っ!」
大きな黒いアゴで、指をガブリと噛まれてしまった。
まさか、あんなにも首が回るとは! このずんぐり体型のキリギリスの体のしなやかさを、身を持って学んだぼくだった。
今度は、枝の棒を使って葉の上に乗せ、無事、写真を撮ることができた。その表情は、「ウッシッシ~」と余裕の笑みを浮かべているようにも見える(下の写真)。
野外調査に同行していたキリギリスの分類学者のピーターに見せると、「頬の模様が赤みをおびたのは初めて! 普通は白色なんだが・・・」と言う。もしかして新種?と思いきや、キリギリスでは同じ種でもこの程度の色の違いが見られるという。なるほど、これも勉強になりました。
Pitbull katydid(Lirometopum coronatum)
口の大きさ:5 mm, 顔の幅 1 cm
撮影地:バルビージャ国立公園、コスタリカ
Pitbull katydid(Lirometopum coronatum)
体長:4 cm
撮影地:バルビージャ国立公園、コスタリカ

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西田賢司(にしだ けんじ)
1972年、大阪府生まれ。中学卒業後に米国へ渡り、大学で生物学を専攻する。1998年からコスタリカ大学で蝶や蛾の生態を主に研究。昆虫を見つける目のよさに定評があり、東南アジアやオーストラリア、中南米での調査も依頼される。現在は、コスタリカの大学や世界各国の研究機関から依頼を受けて、昆虫の調査やプロジェクトに携わっている。第5回「モンベル・チャレンジ・アワード」受賞。著書に『わっ! ヘンな虫 探検昆虫学者の珍虫ファイル』(徳間書店)など。
本人のホームページはhttp://www.kenjinishida.net/jp/indexjp.html