キングウイリアム島の南岸でソリをひく著者(写真クリックで拡大)
(撮影:荻田泰永)

 東からも西からも最も遠い、北西航路の一番奥にキングウイリアム島という島がある。

 南北が約170キロ、東西が約150キロもある三角形の大きな島で、日本の紀伊半島と同じぐらいのスケールがある。しかし島の大部分は不毛なツンドラと複雑なかたちをした湖や小川、クリーム色をしたもろい石灰岩などに覆われており、中央部のもっとも盛り上がった部分でも、その高さはわずか海抜140メートルほどにすぎない。地形は全体的に恐ろしく平坦なため、まだ雪に覆われ、海に氷が張っている時期にこの島を遠くから眺めると、どこから先が島なのかよく分からない。

 海岸から中央に向かって徐々にせり上がっていくが、その角度は極めて微妙で、かつ色調が一様に真っ白なため、目の前の傾斜は錯覚で、実は足元は平らなのではないかと勘違いすることもある。霧が出て視界が悪ければ完全にお手上げで、自分が島にいるのか海にいるのか、それすら判然としない。

 レゾリュートベイを出発してから46日目、私と北極冒険家の荻田泰永がまもなくこの島に到着することを知ったのは、幸運にも島の北端のフェリックス岬に立つ高さ10メートルほどの船舶表示塔に気がついたからだった。

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