第2回 キングウイリアム島――地図のない世界

1846年にキングウイリアム島の手前までやってきたジョン・フランクリン隊は、島の西側に船を進ませた。(クリックで拡大)
(地図:平凡社地図出版)

 ジョン・ロスとJ・C・ロスの探検隊は、世界で初めて北極探検に実地投入された蒸気船ビクトリー号でブーシア半島の東側の海を南下した。半島の南東端の付け根まで南下し、そこの入り江をフェリックス湾と名付けて越冬を始めた。役に立たない蒸気エンジンをスクラップにした後、1830年5月にJ・C・ロスはアジアへとつながる北西航路を探すため、イヌイットをガイドとして連れ、ブーシア半島を西に向かって横断することにした。

 船を離れた彼は、まず半島を横断した後、のちに自分の名前が付けられることになる海峡を渡り、キングウイリアム島に到達した。島の北端にある岬を、探検の後援者の名前をとってフェリックス岬と名付け、さらに南西に約30キロ進んだ最終到達地点を、自分たちの船からビクトリーポイントと命名した。

 このソリ旅行によりJ・C・ロスは地図に描かれた世界の範囲をそれまでより300キロほど西に広げ、北極探検史の本に必ず紹介されることになる目覚ましい結果を残した。彼はこの探検で北西航路の謎――カナダ北部の多島海のどこかに、大西洋とアジアを結ぶ海路は存在するのだろうか――を解くことに成功したわけではなかったが、それでも解決に大きく寄与した。