その2 急ブレーキがかかった人口過剰社会

 こうした人口減少に、さらに拍車をかけているのは、晩婚化と非婚化だ。日本の30代女性の非婚率は、世界最高と言われる。つまり結婚する人が減り、となると、おのずと子供を産む人も減り、人口も減った。

 「日本は住宅費や教育費が高額なことも、少子化に大いに関係している。保育園から予備校、大学まで、ひとりの子供を育てると教育投資が莫大になる。一説にはひとりあたり1000万円の教育費がかかるとも言われています。そのため子供は産んでも、ひとりが限界という夫婦は多い」

 そんな一人っ子の増加が、人口減だけでなく、社会の様相まで変えているという見方もある。兄弟のいない一人っ子は、「兄弟」という一種の社会を知らず、「親と子」という一対一の関係のなかで育っていく。競争もなく、つねに充足感を感じながら大人になっていくことも少なくない。

 「草食系男子とよく言われるが、まさに草食動物のように闘争心のない若者が増えている。これは日本だけでなく、一人っ子政策がおこなわれた中国でも同じです。他人とのコミュニケーション能力が低い、闘争力がない、他人との距離感がつかめない。そんな一人っ子現象とも呼べる社会が生まれつつある」

 最近の男子は軟弱で……と笑っていたころはまだよかった。実はこの草食男子が、やがて国を滅ぼす存在になるかもしれないと石氏は言う。

 「子孫を残すためには、雄同士の闘争がつきもの。逆に闘争心を失えば、セックスにも興味を失い、セックスレスにもつながる。コミュニケーションが苦手となれば、なおさらです。内閣府の調査を見ても、20代の4割がセックスをしていないという驚くべき結果があった。これでは少子化が進んで当然なのです」

(3)「過疎と過密の差が広がり、スラムが生まれる」へ

石 弘之(いし ひろゆき)

1940年生まれ。東京大学卒業後、朝日新聞社編集委員を経て、国連環境計画(UNEP)上級顧問、東京大学大学院教授、駐ザンビア特命全権大使、北海道大学、北京大学客員教授などを歴任。著書に、「名作の中の地球環境史」(岩波書店)、「地球環境“危機”報告」(有斐閣)、「地球環境の事件簿」(岩波書店)、「火山噴火・動物虐殺・人口爆発」(洋泉社)など。


福光 恵(ふくみつ めぐみ)

1960年東京都生まれ。美術業界で働いたのち、フリーライターに。日経新聞プラス1「コトバの鏡」、アスキードットPC「自腹で大人買い」などの連載あり。