その1 少子化を招いた3つの方程式

「メロドラマがブラジルの少子化を加速した」

 そんな記事が、今号の本誌に掲載されている。50年で出生率が三分の一にまで減少したブラジル。その影に、ブラジルの女性たちを熱狂させる「ノベラ」と呼ばれるテレビのメロドラマの存在があるという。ノベラに出てくるのは、高い教育を受け、男性と肩を並べて働いているヒロインたち。そしてたいていが、1~2人という少ない子供しか産まない。そうした理想のヒロイン像が、一般の女性たちの多産を思いとどまらせている要因のひとつではないか。そう、記事は分析する。

 これまで見てきたように、長い間、日本の人口は、天候や災害など、自然の力によって左右されてきた。また近代は、開国による社会システムの激変などによって、人口は大きくその数を伸ばしたりもした。とはいえこれらは、人口増減を招いた、いわば外的要因。一方、ブラジルで見られる「ドラマのヒロインに近づきたい」という思いは、それぞれの人の心のなかにすむ目に見えない要因といえる。

 世界の人口が70億人を突破し、途上国が人口増にあえぐなか、少子高齢化の進む先進国のなかでも、そのトップを走る日本。外的要因に左右されにくくなった現代では、心理的要因が出生率に大きな影響を与えることも多そうだ。ではこの深刻な少子化を招いている、日本人の心に住む「ノベラ」は何なのか。

「パラサイトシングル」や「婚活」などの研究で知られ、「少子社会日本」(岩波新書)の著作もある、社会学者の山田昌弘中央大学教授はこう話す。