第2話  JAMSTECへの道 前編

その4  アメリカ留学「ケンはなかなか面白いアイデアを持っている」

1982年のアメリカ映画「愛と青春の旅だち」(原題:An Officer and a Gentleman)の撮影が行われたシアトル近郊のポート・タウンゼントの浜辺。シアトルからフェリーで1時間くらいのところにある。2回の留学中に何度も訪れた。
(提供:高井研)

アメリカでは議論を尽くして研究のアイデアやデザインをしっかり固めることの重要性を学んだ。学生でもイッチョウマエの顔をして主体的に研究を進めるものなのだということを学んだ。そして自分なりのやりたい研究テーマが溢れるほど湧いてきた。それをやれば、世界中の誰にも負けないぜ。

日本に帰ろう。そして帰ったら、俺はメチャクチャやるぜ。もはや大学の先生やJAMSTECなんか目じゃないぜ。

たった1年という短い間だったけれども、ボクにとっての初めての留学は、研究という世界共通言語の限りない広がりを思いっきり感じさせてくれた。そして、井の中の蛙だったボクに、とてもリアルな「大きな世界」の存在を教えてくれた。

アメリカ留学中に英語の勉強として、映画「愛と青春の旅立ち」を何度も見ては、「やっぱりこの映画エエわー」と爽やかな気持ちになっていたことを覚えている。シアトルの近くにある海辺の小さな田舎街、ポート・タウンゼントで撮影された、リチャード・ギアとデボラ・ウィンガーが演じる青春映画だ。

もう25歳になったボクにとって、この最初の留学は、まさしくある意味、「愛と青春の旅立ち」と呼べるモノだった(愛の部分は省きましたけどねッ)。ボクは、旅立つリチャード・ギアになったような気持ちで、よく分からない高揚感と情熱をたぎらせて再び日本に戻ってきたんだ。

つづく(次回、緊急番外編「『しんかい6500』、東北地方太平洋沖地震の震源域に潜る」)



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高井 研

高井 研(たかい けん)

1969年京都府生まれ。京都大学農学部の水産学科で微生物の研究を始め、1997年に海洋研究開発機構(JAMSTEC)の研究者に。現在は、同機構、深海・地殻内生物圏研究プログラムのディレクターおよび、プレカンブリアンエコシステムラボラトリーユニットリーダー。2012年9月よりJAXA宇宙科学研究所客員教授を兼任。著書に『生命はなぜ生まれたのか――地球生物の起源の謎に迫る』(幻冬舎新書)など。本誌2011年2月号「人物ファイル」にも登場した。