第2話  JAMSTECへの道 前編

その4  アメリカ留学「ケンはなかなか面白いアイデアを持っている」

ワシントン大学海洋学部でオフィスをもらったボク。一応、肩書きは「招聘研究員」だったのさ。
(提供:高井研)

それともうひとつ、ボクのささやかな自慢がある。留学を終えてから、いろいろな国際学会などで、ジョンと再会したとき、ジョンはいつも他の研究者に「オレが見てきた学生の中で、ケンは一番働く学生だった。24時間営業してるんだよ。ケンには、絶対実験量では勝てないよ」と、半分褒めながら、そして半分バカにしながら紹介してくれた。

確かに、留学中あまり人付き合いがなかったので、ほぼ毎日朝5時まで実験していた。実際は、昼間にかなりさぼっていたので、24時間働いていたわけではなかった。しかし、今でもワシントン大学海洋学部の中では、「24時間戦える研究者」という武勇伝が伝わっているらしく、研究競争相手として恐れられているという話を聞くと、研究者としてはちょっとだけ誇らしい気持ちになる。国際人としては、チョットいかがなものかとも思うが。

そんな苦しくも楽しい留学生活も残すところあとわずかになった1995年の3月下旬のことだった。

実験中のボクに、トム・ハンクスをプチ整形したような顔をした友人のジム・ホールデンが、ニューヨーク・タイムズを手にして、何やら興奮して近づいてきた。

「ケン、この記事を読んだか?」

ボクは毎日、住んでいたシェアハウスに置いてある「シアトル・タイムズ」のスポーツ欄と男女出会い伝言板欄しか読んでいなかったので、「なになに?」と記事を眺めた。