第2話  JAMSTECへの道 前編

その4  アメリカ留学「ケンはなかなか面白いアイデアを持っている」

そしてワシントン大学海洋学部は、アメリカ西海岸のオレゴン州からワシントン州、カナダ・ブリティッシュコロンビア州沖の、東太平洋にある中央海嶺に点在する深海熱水域を「我が領土」として研究を進めていた。

留学中のボクは、そうした幾つもの深海熱水域から分離された超好熱菌の生理学的多様性が、熱水の化学的特徴や立地条件と関連しているかどうかを調べる研究を任されていた。

しかし当時のボクは、「深海熱水の地質学的・化学的な違い? そんなんどうでもええわ!」的な考え方をしていた。むしろ、自分が実験を進めている超好熱菌が低温(といっても50℃くらいの温度だが)に晒されたとき、冬眠寸前の状態にシフトする興味深い現象を見つけて、嬉々として実験に精を出していた。

超好熱菌の冬眠寸前現象が、「地球や海洋が冷却されてゆく過程で、超好熱菌から常温菌へ適応していった初期生命進化」を理解するモデルになる。と妄想を膨らませていた。

この研究妄想を、天才的ストーリーテラーのジョンに、「ケンはなかなか面白いアイデアを持っている」とミーティングで褒めてもらったことは、ボクのささやかな自慢だった。