第2話  JAMSTECへの道 前編

その4  アメリカ留学「ケンはなかなか面白いアイデアを持っている」

シシリー・マフィアのゴッドファーザーのような顔をしたジョン・バロス。そしてすこしワインに酔ったボク。真ん中に写っている女性は、当時ジョンの恋人だったジョディー・デミング。現在は結婚している。
(提供:高井研)

そして何より、ボクはジョンの「研究の本質的な意味づけや、方向性に関するライティングの巧さ、そして物語や論理展開能力の凄まじさ」に衝撃を受けた。ジョンの研究室で行われていた研究やボクが留学しているときにやっていた研究は、実はあんまりたいしたものではなくて、むしろ京都大学の水産微生物学研究室の方が、はるかに研究環境や設備は整っていて、高度な研究をやっていたと思う。しかし、そのたいしたことのないはずの研究が、彼の研究グラント(助成金)の申請書や論文になると、突然、まばゆいまでの輝きを放つのだ。

もう一つ、ボクが留学中に衝撃を受けたのが、アメリカの大学におけるIT化の先進性であった。ワシントン大学海洋学部の友人の学生達は、「電子メール」とやらを使っていた。ボクが留学に旅立つ1994年の春、京都大学の農学部では研究用の「パソコン通信アドレスの登録うんぬん」という話があったが、「オタクのやることよ」と言って小馬鹿にしていた記憶があるが、どうやら「電子メール」はとても便利なものらしいということを知って驚いた。
ボクはその時、付き合っていたミズーリ州の大学にいた彼女(現my wife)にほんの刹那電話で話すヨロコビと電話料金のクルシミのハザマで葛藤しながら、せっせとラブレターを書いていたというのに。

さらに、図書館には「メッドライン」という論文検索ツールが装備されたパソコンが整然と並んでいた。日本では、Current ContentsとChemical AbstractsとBiological Abstractsという冊子を一生懸命手作業で調べて、新規論文を探さないといけなかったのが、インターネットという便利なモノを使って、あっという間に探せるのだ。