第2章 1888-1900 ゆりかごの時代

第9回 ダイレクトメール

 協会を立て直す大役を課せられたグロブナーだったものの、初めて与えられた仕事はバックナンバーの索引づくりでした。

 なんとも地味ですが、1年契約の編集局長という話がいつの間にか消えてなくなり、試用期間つきの編集長補佐となった身には、見事に型どおりの仕事といえるかもしれません。

 クリエイティビティも営業努力もいらない機械的な作業。おまけに、パートタイムの事務職人がほかに1人いましたが、最初の赤ん坊ができたばかりで、彼は30分おきに部屋を出て行ったそうです。 索引づくりに加えて、やむをえずグロブナーは協会の面倒な仕事を1人で引き受けました。

   しかし、逆風のなかでもグロブナーは着実に任務を果たしてゆきます。

 協会を立て直すことは、単に雑誌の売り上げを伸ばすのではなく、会員を増やすことである。このグラハム・ベルの考えにはグロブナーも賛成でした。

 そのため、彼が最初にうった手がダイレクトメールでした。

 ベル博士や大学教授であった自分の父はもとより、「会員になってくれそうなお知り合いを協会に推薦してください」と、彼はまず著名人に頼みまくります。そもそも会員には名士や著名人がたくさんいましたから、効果あり、と考えたのでしょう。

 会員から協会に推薦状が届くと、グロブナーはみずから入会をすすめる手紙を書きました。「安っぽい便箋の手紙には誰も注意なんか払わない」と、エンボス入りの最高級の便箋に書いた文章は「あなたが会員に推薦されたことをお知らせすることを大変光栄に存じます……」

 なんだかうさん臭い?(笑)