――確かに、ちょっと考えてみただけでも大変そうですね。

 まずキャンプや野宿できる場所を探すことからしてひと苦労です。

 日本縦断の旅の本を読んでいつも不思議に思うのは、いちばん安全だと思って泊まろうとするお寺なんかが排他的なんですよね。境内にも泊めさせてくれない。それで駅に泊まろうとしたら、その駅によってはまったく話し合いひとつぜずに追い出されるということがよくあります。

――わざわざ海外に出なくても、十分冒険はできると。

 物質的には豊かだけれど、心根は意外に豊かじゃないとか。逆に、人情がいっぱいあって、助けられることもあると思う。そうやって旅をしてみると、いまの日本がよく見えてくると思います。

 繰り返しになりますが、ぼくにとって記録はあまり意味を持たないんです。それに、いまは人工衛星で極地の様子までわかってしまうでしょう。こういう時代だからこそ、記録よりも、自分なりの好奇心とフロンティアスピリットをもって、普遍的な困難に挑戦していく姿勢にぼくは惹かれます。そういう冒険家の登場を期待したいですね。

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おわり

椎名誠(しいな まこと)

1944年、東京生まれ。作家。写真家、映画監督としても活躍。『犬の系譜』で吉川英治文学新人賞、『アド・バード』で日本SF大賞を受賞。近著の『風を見にいく』(光文社)、『水惑星の旅』(新潮社)ほか、著書多数。この秋には「あやしい探検隊シリーズ」では13年ぶり、完全書き下ろしでは25年ぶりとなる『あやしい探検隊 北海道物乞い旅』が刊行予定。また、2011年8月、公式インターネットミュージアム「椎名誠 旅する文学館」がオープンした。URLはhttp://www.shiina-tabi-bungakukan.com/

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