本音を言うと、ぼくは植村さんのほうをやりたかったんです。極地ロケをするということで、北極圏にもマッキンリーにも行けたし、犬ぞりも乗れるという話でした。よりリアルにするために、映画会社もぼくみたいな人間を使おうとしたようです。『シベリア大紀行』も『植村直己物語』も1年間にわたるロケが必要で、TBSと先に約束をしていたのでやむをえず断りましたけれど、主演の話はすごく光栄でした。

――椎名さんの植村直己役、拝見したかったです。他に印象に残る冒険家はいますか?

 笹森儀助ですね。明治時代の冒険家です。平凡社の東洋文庫に著書が入っています。

 そのひとつである『南嶋探験』は青森生まれの儀助さんが西表島まで行く話。これはのっけから笑っちゃいますよ。青森から列車で出てきて、東京で30日間ぐらい情報を集めてから船で西表島に向かうんだけど、沖縄に着いたら言葉がいっさい通じないという(笑)。

 でも、結局あの西表島を縦断するんだよね。当時あれほどの秘境は日本になかったわけでしょう。それだけでも感心します。同じ平凡社の東洋文庫に収められているイザベラ・バードの『日本奥地紀行』と並ぶぐらい、儀助さんの冒険談は貴重で面白い。何よりフロンティア・スピリットにあふれている姿勢がいいんです。

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