ナショジオ日本版 2011年9月号 みなしごゾウを育てる サイドバー 取材現場から:写真家 マイケル・ニコルズ 安らぎのひととき 写真家のニコルズは取材中、動物に感情移入するのを避け、中立的な立場をとるように心がけている。しかし、生後7カ月の雌のみなしごゾウ、シュクル(写真)には心を動かされた。「自然界の中でも、ゾウは私たちがもっと理解しなければならない重要な存在だと、私は思います」とニコルズは話す。――キャサリン・ザッカーマン レンズの裏側 ――ひそやかな雰囲気を感じさせる写真ですね。 ニコルズ:夕暮れ時の保護センターで、夕食のミルクを飲んで、寝る準備をしているシュクルを写しました。みなしごゾウを独りにしないよう、飼育員のジバ・ガルガロも一緒に夜を過ごします。毛布はぬくもりと安らぎを子ゾウに与えるものです。母親ゾウの肌触りに似ているのでしょう。幼いゾウは何かに触っているのが大好きで、毛布は欠かせません。 ――この写真があなたにとって特別なのは、なぜですか? ニコルズ:一つは耳です。ゾウの耳は体温の調節など大切な役割を果たします。普段はまず見られない裏側の血管まで、シュクルははっきり見せてくれました。あと、ガルガロの目に映った光も気に入っています。彼にとって、これは単なる仕事ではありません。ゾウのことがいかに好きか、彼の愛情を表現したいと思いました。 シュクルは瀕死の状態にあったところを助けられました。この写真は何かを強く訴えるものではありません。でも、互いを大切に思っていることを穏やかに伝えていると思います。 この写真の特集 みなしごゾウを育てる ケニアには、人間によって母親を殺されたみなしごゾウを助け出し、育てる施設がある。保護された子ゾウたちは、献身的な飼育員によって傷を癒やされ、その愛情を胸に、再び野生へと帰っていく。