第1回 ランカスター海峡――神話となった北西航路探検

イギリスの探検家ジョン・ロス(1777~1856)。1818年と1829~33年の二度、北西航路を探検した。
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 初めてランカスター海峡を望んだ探検家は、イギリス海軍の軍人ジョン・ロスだった。ロスの探検はグリーンランドの東側の海氷が開き、水面が現れたという報告が、捕鯨業者たちからもたらされたことが間接的なきっかけとなった。

 北緯75度より北の海域では、それまで4世紀にわたり氷が緩んだことはなく、グリーンランド東部に上陸したという報告すらなかったのに、その不動の氷が今年は緩んでいるというのだ。その情報はイギリスの学者や海軍関係者の間で広まり、ついにヨーロッパからアジアへと続く幻の北西航路が見つかるのではないかという期待がにわかに高まったのだ。

 イギリス海軍は4隻の軍艦を北極探検に送り出し、そのうちの2隻がロスの指揮する北西航路探検の船だった。1818年にロンドンを出発したロスの探検隊は、1616年のウィリアム・バフィン以来、約200年ぶりにカナダのバフィン湾に船を進め、そして北上した。北極海へと続くスミス海峡が氷に閉ざされているのを確認した後、ロスはそこから南下しランカスター海峡の入り口に達した。