第1回 ランカスター海峡――神話となった北西航路探検

 荒涼とした風景が西日で激しく照らされ赤く色づいた。気温は氷点下27度。右足の甲から先は感覚が失われ、鉛の塊が足にくっついているみたいだった。どうやったらこの激しい乱氷の中を、ひとりでは持ち上げることができないほど重いソリを引きずって進むことができるのか。そう考えると思わず途方に暮れた。明日からのことを思うと不安になった。テントに入り、私は日記をつけた。

「ラッセル島は見えたが、この光景を見ると自分たちが本当にあそこまでたどり着けるのか、疑問に思わざるを得ない」

 レゾリュートベイの南側を東西に横断するこの海峡は、東からランカスター海峡、バロウ海峡、メルヴィル海峡、マクルーア海峡と次々と名前を変えて、北極海まで続いている。私たちの前に現れた始末に負えない乱氷帯は、北極海にある強力な渦巻きの力により浮氷が海峡に流れ込んできて形成されたものだ。

 浮氷は風や潮流、海底の地形などの影響を受けて、ある一定の場所に集まる。それが冬になって海表面ごと固まり、さらに潮の圧力を受けて、いたるところで変形したり、氷丘や氷脈が形成されたりして、乱れに乱れるのだ。

 19世紀に本格化した北西航路の探検史において、ランカスター海峡にみられるような氷の強い圧力は、探検家たちの行く手を阻む最大の障害のひとつとして、このドラマにおける隠れた主役とでもいうべき重要な役割を演じてきた。