第1回 ランカスター海峡――神話となった北西航路探検

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19世紀、多くの探検家が北西航路を目指した(クリックで拡大)
(地図:平凡社地図出版(2点とも))

 最初の目的地はレゾリュートベイから直線距離でほぼ700キロ南に位置するキングウイリアム島だった。フランクリン隊が全滅し、その後、彼らの遺体が白骨となり何十体と見つかった、忌まわしい歴史を持つ島である。出発した時点で60日分の食料と燃料を詰めこんだソリの重さは100キロ前後に達していた。

 出発から18日、バロウ海峡の乱氷帯に突入してからも、すでに一週間が経っていた。乱氷の激しさは予想を大きく上回っていた。私たちは近くにある比較的背の高い氷の丘に登って、乱氷の中に進めるルートがないか偵察した。

 無限の氷がでたらめに静寂を突き破り、海はどこまでもひどく混乱していた。丘の上に登ってすぐ、戦艦みたいに大きなテーブル状の氷山が少なくても二つ、はるか向こうの氷上に浮かんでいるのが見えた。その直線的なフォルムはコンクリート建造物のように無機質で、それが周囲に広がるずたずたの氷の様相と相まって、風景は空襲で焼け野原となった都市の廃墟みたいに凄惨を極めていた。